私はMOBになりたい

昼食によく行くラーメン屋がある。
会社から近くて、値段はそこそこ、味は良い。注文は食券方式。
生来人と接するのが苦手な僕としては、店員との会話が必要ない食券というシステムは素晴らしいものだと思う。
それはそれとしてラーメン屋だ。
僕はその店に大体週一くらいのペースで通っているのだけれど、最近、店員がとうとう「いつもご利用ありがとうございます!」なんて言い始めた。
顔を覚えられたのだ。僕は恐怖に慄いた。

先にも書いた通り、僕は人と接するのが苦手だ。
初対面の人とは大体マトモに話せないし、顔見知り程度でもちょっと無理しないと会話が成立しない。
初めて入る店は絶対に通行人を装って店の前を二往復しつつ店内の様子を観察するし、店員が馴れ馴れしい服屋は二度と行かない。
牛丼を食べるなら当然のように吉野家より松屋だ。もちろん注文が食券システムだからだ。
何はなくとも無関心でいてほしいのだ。
ネットでコンビニ店員が常連客にあだ名をつけているという話を聞いて、吹っ切れるまでの数日の間は近所のコンビニに行くのを控えたこともある。
結局それは吹っ切れたけれど、どうせあのコンビニの裏では、僕は「ガリポテチ」とか「コーラ中毒」とか「前髪長すぎて前見えてるか不安」とか呼ばれてるに違いないと思う。みんなが笑ってる。お日様も笑ってる。るるるるる。

とは言え、食べ慣れたラーメンを絶つのもまた難しい。
僕の職場周辺は繁華街ということもあって、ファミリー向けの飲食店が多いのだ。そんな中で新しいみせの開拓なんて怖すぎる。
適当に入った店の席が全部4人掛けのボックス席だった、なんてことがあったら目も当てられない。
実際1度だけそういうことがあった。飯食いながら半泣きだよこっちは。

実際、そいつは自意識過剰が過ぎるということは重々承知している。
「気にするほど見られてもいないよ」なんて、確かBUMP OF CHICKENの藤原さんも歌ってた気がするけれど、それはそれ、これはこれだ。
怖いもんは怖い。仕方ない。
僕はばかなので高いところは好きだから、高所恐怖症の人の気持ちは全くわからないけれど、世の人々には、それと同じように他人が怖い人間がいることを忘れないでほしい。
いやまあ、正確には他人が怖いというわけではないんだと思う。
誰とも知らない他人に注目されたり興味を持たれるのが苦手なのだ。相手が知り合いなら別に構わない。

誰とも知らないこの世数多の人々にとっての背景でありたい。それも雑草とか電柱みたいな。そんなんでいい。
平穏無事に既知の範囲内でだらだら生きていきたい。変化とかあんまりいらない。明日も今日と同じような一日であればいい。

何でもいいけど、とにかく僕はMOBになりたい。

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